冬に生まれたひとたち

2013.10.24

少女は自らに英雄をもとめる、その英雄とは母のことだ。
潔癖で、気高くて、真実というものを追い求める。
自分がどれだけ嘘付きで、非道な行動をとれて、嫌らしいのかを知りながら。

少年はいつか老いていまを失うことに気づかない。
まわりの人間だって気づかない。けれども、ある日突然少年でいることができなくなる。

若い時間というのは何もかも初めてのような新鮮さに満ちあふれている、
家族がいない家で一人ぼっちで過ごす夜や、夜中に友達と会う秘密めいた高揚や、恋する人との二人だけの時間や、
初めて訪れる場所への驚きと恐怖のなかに、これまでの経験を振り返ることはない。
ただただ吸収していく。
目の前の出来事と自分を取り巻いていつだって自意識が並走している。

時間は流れている。
目の前の物事をとどめておきたくても
それができないもどかしさをいつも何となく感じていた。
記憶しているはずなのに開けることができる抽き出しには限界がある。
写真に撮ったり、絵に描いたり、日記にのこしても駄目だ。
描いたり撮ったりしている間にも時間は流れてしまっている。
髪だって伸びるし、細胞も入れ替わり続けている。

忘れたくない、と強く感情を揺さぶられること自体が大切なのだとは思うけど。

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